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私の中のハルマゲドン ー地上世界で起こっていることの概念的な本質についてー

神秘体験などというと、恐ろしく特別な感じがあるが、しかしこいつをしっかりと体験してから質料的な世界に戻れば、そこにも残っている神秘はある。

一般にこれは神秘なのだと知るのは、まずは理解ができるということであろう。それは言葉を介するかもしれないし、表情かもしれない。しかし、哲学者の多くがここに神秘を見出すからこそ、これを謎とみなして探求する。哲学者でなくとも、この謎が謎でなくなっている人間はそうはいないはずである。いったんこれを神秘と明確に認知すれば、もはやこの謎を放置は出来なくなるが、神秘を見ないことによって、解明の可能性もまた忘却したままになる。

神秘を感得せずに生命であるとは、神秘を突き詰めてみればそれは機械と変わらない。神秘だからこその生命であり、動物や植物或いは鉱物すらそれを知っているように感じる。然して、神秘をことさらに排除せんとて、実利に生きる知識に洗脳された者だけが、この宇宙の異端なのである。

神秘を感じないとは単なる不感症ではなく、症状に収まらぬ確かな病気である。これは神秘を解明したと思い込む神秘主義者すら例外ではない。探究し尽くしてなお、謎として神秘は現前するところにこそ、神秘の神秘たる所以があり、宇宙の内側にある以上は謎として生を全うするしかない。

病気とは不都合である。調和の乱れである。病気には原因があり、その調和の乱れゆえに周囲の組織とは法を共にできない。癌とは調和的な不適合に過ぎず、病気も一般的には調和的な観点からその不都合の治療へ向かうべきである。不都合だけを隠蔽する発想こそ、そもそもが病気なのである。

排除する、抑え込む、無視する、これらを伴う嘘と狡猾が人類の病気の原因であり、調和を根源的に不可能にする要素である。ただし、完全な調和には神秘を感じる知性の存在が想定できず、純粋に神秘ではない知識によって、つまり嘘と狡猾によって、神秘は浮かび上がるのである。病気が存在するがゆえに健康は尊ばれる。

調和が健康なら、不調和こそが病気である。病気が全ての不調和であり、病気を病気と看破出来ないことが、癌細胞に成り果てたと言う証左である。精神が調和でなく、歪な愉悦や嘲笑を人生とする者は、調和を根源的に成立させない優劣感覚と言う病気、いや病巣なのである

癌細胞は周囲の組織を侵食し、さらに転移する。身体においてはリンパの流れを、宇宙においては言葉や行為という媒体を通して、際限なく広がる。絶対的な正常さはこの侵食への完全防御を持つゆえに、癌になることも故にこれが原因で死に至ることもない。人間が死すべき存在であるのは、すなわち神秘を忘却した異常さゆえなのであり、この回復こそが地上では企図され、誰も果たせないだけである。優劣感覚が病巣である以上は、絶対的な平等こそ完全免疫である。そして、平等こそ神秘の下でしか感得できない。

地上でその死を迎えるときに、この絶対調和に達することはある。それが思い出す、わかる、なのであり、そこには主体も対象も分離以前であるから、地上的ではありえない。それが絶対的な平等の感覚である。だから、死だけがこの覚知をもたらしうる。繰り返すが主体と対象の分離以前と言うことは体験的であり得ない。神秘を体験するとは、実は謎を明確に見ることに過ぎず、そこに優越感を感じ取るならば、結局はさらに酷い病気になるだけである

死すべき存在は一様に神秘へ届いていないゆえに死ぬのである。逆に死んでいない上に、病気でないのであれば如何なる死ぬ理由もない。ただ、病気にならないこととは完全調和であるから、人間は個人ではそれをなし得ない。歪な隣人との関係の悩みは尽きることなく、それは自分の理解が追いついてもなお、隣人がその理解を見せない形で調和は乱れる。つまり理解は不十分なのである。そしてその非対称性こそが神秘である。

この神秘を抱くこと、解明を意志しつつ、しかも解明の不可能性と可能性の両立を理解する形での解明、そこにまた現れる神秘と言う無限のトートロジーが完全に意味を形成すると、概念の上で不死を見る。そして概念が先で物理は後なのである。そして神秘の理解とは、生と死は等価である、とも表現すべきものであり、神秘へ届くならば、逆に生もまた必然ではなくなるということにもなる。つまりは、死を超越した者は、生も死もどうでもいい使徒として地上へは訪問するのである。

信仰と言う言葉は神秘の動詞でもある。ゆえに宇宙の絶対調和の在り方にこの動詞的名詞を与えておくことは、神秘を言葉を超えたところに定式化し、すぐに脱構築する構造となる。言葉は創造できるが概念は創造できない。概念だけは主体と対象の分離以前の領域でのみ存在し、存在は生成も消滅も維持も内包して、無やゼロなのである。


この文章によって、私が意図するのは神秘への喚起である。神秘こそが調和を回復する絶対的手段である以上は、神秘を神秘と感じる感受性の刺激、謎を見出す意味感知機能の復活と復権こそが、地上世界を救済するための最終手段である。全ての地上の出来事は、人々が神秘を取り戻すために今後も進展する。起こることはただ、それだけである。その本質が見えるか見えないか、それが神秘を抱いているか抱いていないか、調和なのか歪なのかと言う判別になる。

救済は個人的であり、癌が接触と転移で広がるなら、神秘は共鳴と共感を通して伝播し、癌への絶対防御を形成する。

ハルマゲドンはこのようにも記述できる。



by selo-celery | 2020-11-19 04:15